Taste of Japan

KUSAKABE

KUSAKABE

サンフランシスコの中心部、経済地区ファイナンシャルディストリクトにある鮨懐石

サンフランシスコの中心部、経済地区ファイナンシャルディストリクトにある鮨懐石の店、Kusakabe。全部で29席(うち12席はテーブル席)とこじんまりとした店舗で、メニューは2種類のおまかせコース(お任せメニューを終わると追加でアラカルトで頼むことも可能)のみの高級店にもかかわらず、人気店として知られている。2016、2017年にはミシュランの一つ星も獲得しているほどの本格鮨懐石の店。しかし、来店客に日本人客は少なく90%以上は地元の人で常連客も多いという。



<研究熱心な日下部シェフが語る地元の人に合う伝統的な和食>

親戚をいたこともあり25年ほど前にサンフランシスコに渡米した京都出身の日下部シェフはサンフランシスコに自身のレストランを開けることを目標に掲げ、一度、日本に帰り日本食店で10年修行を積み、その後、再び、渡米し今度は鮨の勉強。鮨のお奥深さにも感銘を受け、その集大成として2008年にはアメリカ代表として参加した寿司界のアカデミーとも言われる世界大会Eat Japan-World Sushi Awardsでは世界チャンピオンに。満を辞して2014年にKusakabeをオープン。日下部シェフは「お寿司を通して、伝統的な日本食の技法を伝えていこう」というコンセプトを元に今でも日々、研究を重ねている。かと言って、日本の和食の正解を押し付けようというわけではないという。「伝統的な日本食を基本に、地元の人に合うように変えていく。そこがアメリカでお店を出すことの面白み」と語る日下部シェフ。近年、アメリカでは食に興味を持つ人口が増え、もともと和食好きでなくても、評判を聞いて食べに来る地元の人間も多く、初めて和食を口にするという人もいるという。「食はそれぞれに培った文化ですから、いきなり日本から持ってきたものをそのまま好きになってください、と言っても難しい。知らない人にも楽しんでもらう、ということが大前提」と日下部シェフ。サンフランシスコでは、日本食以外のレストランに行くことが多いという。料理だけではなく、アメリカでは予約の取り方からレストランのプレゼンテーションの仕方などをレストラン全体のオペレーションを実際に経験し勉強するそうだ。その代わり、日本に帰った時には日本の伝統を大切にしているお店に行くことが多いという勤勉さ。



<日本食に合うのは日本の塩、酢>

日本からの食材を多く取り扱うKusakabe。日本にしかない独特なものがやはりあるという。それは和食をやる上では重要になってくるという。魚などのメインとなる食材の多くは日本産のものを使っているが、一番のこだわりは調味料。「和食に合う調味料、お酢やお塩などは、やはり日本のものでないと」と日下部シェフ。その一方で、アメリカにいるからこそ試していることもある。米はあえてカリフォルニア米を使用。カリフォルニアのお米のレベルが上がっており、独自の研究から作られたブレンドにより鮨にあうお米が出来上がるそうだ。「せっかくこちらでやっているのだから、アメリカでしか食べられないものを作りたい」と日下部シェフは言う。



地元の人に受け入れられる和食、というのは具体的に、言葉にするのは難しいのだけれども、感覚的には、少しずつわかって来つつある、と日下部シェフは語る。日本食の技巧を鮨にも応用。本格派でありながら、和食初心者にも受け入れられやすいお店、そんなお店がKusakabeである。