Taste of Japan

北海道の広大な自然に育まれた、世界に誇る牛乳の味

日本における牛乳の一大産地といえば北海道。日本列島の最北に位置する北海道エリアには、牧場や牧草畑に適した広大な土地、冷涼な気候といった地域的特徴があることから酪農が発展したという歴史がある。北海道で作られる牛乳のおいしさの秘密とは?

北海道の気候風土は、牛にとって理想的な環境。北海道の全域で酪農が行われている。

日本全体の生乳の生産量のうち、北海道産は55.9%(2020年時点)を占めている。乳用牛飼養頭数は810,699頭で、全国の61.3%にあたる。自然に恵まれた北海道で育まれる乳製品は、どれも抜群においしい。そのおいしさは、生乳の生産にさまざまな形で関わる人たちの努力の賜物だ。

「北海道産牛乳はもちろんのこと、日本の牛乳は、安全・安心という点が消費者の皆様には高く評価されているように感じます。搾りたての生乳は、牛の体温と同じくらいの約38~39℃です。そのままでは菌が増殖してしまうので、長時間貯蔵することができません。そのため、搾られた生乳は、外気に触れないようバルククーラー(生乳を保管するタンク)に移し、4℃以下まで冷却します。トレサビリティシステムのもと、常に4℃以下を保った状態で取り扱われ、長距離移動をしても品質を保ち、おいしい状態でお届けできるのです」

こう語るのは、ホクレン農業協同組合連合会(以下、ホクレン)の経営企画部広報総合課・林将也さん。ホクレンとは、北海道産の農畜産物の集荷・加工・流通・販売や、生産者の農畜産物生産に必要な機械・器具・肥料・飼料などの資材や生産技術、情報の提供を目的として、農協によって組織された連合会だ。北海道で生産された生乳を集荷し、乳業メーカーに販売する役割を担っている。

「北海道エリアでは、ほぼすべての酪農生産者は自給飼料で乳牛を育てています。広大な土地があるからこそ、牧草も育てられるのです。安全・安心についても高い意識をもち、牛舎の衛生管理もしっかり行っている方が多いと感じます」(ホクレン乳製品牛乳課・堀田恭平さん)

牛たちがストレスなく快適に過ごせるよう、日々の牛舎の清掃を丁寧に行う。

牧場で絞られた生乳は、バルククーラーと呼ばれる冷却・保管用タンクに集め、4℃以下に冷却。

温度管理は自動化されており、搾乳時から出荷時まで温度の追跡ができる。

日本産の牛乳が国内外から評価されているのは、何といっても安心して飲める品質の高さだ。

「技術においては欧米との共通点が多く、ロボット搾乳の導入も進んでいます。しかしながら、北海道牛乳の衛生的乳質は、世界でもトップクラスにあると自負して取り組んでいます(*)」(ホクレン酪農部生乳共販課・渡邊崇宏さん)

* 北海道酪農検定検査協会
参考:https://www.milkland-hokkaido.com/ippai/anzen.html


北海道の乳製品はすでに海外でも良質な食への関心が高い人たちから、大きな関心が寄せられている。

「日本から比較的距離の近い東南アジア、東アジアへは、常温保存対応のロングライフ(LL)牛乳やチルド牛乳が輸出されています。価格は日本と比較すると高めであり、他国産の牛乳とも価格差がありますが、現地の小売スーパーなどで販売されています」(堀田さん)

生乳の品質は牛たちが食べる飼料に大きな影響を受ける。

広大な土地で牧草を育て、質のよい飼料を牛に与えることができるのも、北海道の酪農家の強みだ。

子牛にミルクを与える様子。丁寧できめ細かな世話が、牛乳の味わいにつながっていく。写真提供:農林水産省広報誌「aff」2019年7月号

日本の牛乳の中でも、北海道ブランドは海外ではどのように認知されているのだろう。

「現地からは『信頼できるし、おいしい』『日本に旅行した際に購入して飲み、好きになった』といった声を聞きます。輸入業者の方からは、“北海道”はおいしさと高品質を表すパワーワードだとお聞きしたことも」(林さん)

緑の牧草と青い空がどこまでも広がる中、牛たちがのびのびと育つ北海道の風景は、おいしい牛乳の産地として海外でも認知されている。

ホクレンが輸出する、よつ葉乳業のLL牛乳。

北海道青年部協議会副会長であり、酪農家の遠藤洋志さんにも、生産者の想いを聞いた。

「北海道牛乳の品質は世界でもトップクラスだということは、我々も誇りに思っています。それは、生産者がそれぞれに『命の大切さ』と真摯に向き合っているからだと思うんです。私たちは生き物を扱っています。だから、酪農は大変な仕事です。牛たちは“経済動物”と呼ばれ、流通にのせるために搾乳が行われていますが、本来は、母牛が子牛に飲ませるためのミルクを人間がいただいているという意識は忘れたことはありません。日本語には『いただきます』という素晴らしい言葉があります。自然の恵みに感謝するということは、日本の歴史においてずっと人々のなかに受け継がれてきています。ただ、不測の事態が起きた時、需要と供給のバランスが崩れてしまうこともありますが、安心で安全な生乳・乳製品の確保と世界品質の生乳を守るために、生産継続をしていく必要があると実感しています」

2006年に、北海道牛乳の消費拡大を目標として立ち上がった「ミルクランド北海道」は、 北海道の酪農生産者の方々が資本を出し合い活動している事業のひとつ。キャッチフレーズは「世界に誇る一杯を」だ。

北海道の酪農家をはじめ、日本の牛乳と乳製品の生産に携わる人たちのひたむきな取り組みが生み出す“世界に誇る一杯”。ひと口飲めば、誰もがきっとそのおいしさの虜になるはずだ。

冷やしてストレートで飲むのはもちろん、コーヒーやスムージーに入れたり、シチューやスープ、スイーツの材料に使ったり。日本産の牛乳は、そのすべてを抜群においしく引き立ててくれる。

参考:日本畜産物輸出促進協議会
写真提供:ホクレン
文・青山友美(カレジアスネイビー)

北海道
ホクレン農業協同組合連合会

北海道内のJA(農業協同組合)が出資し、JAの経済事業を担うことを目的として設立された組織。生産者の営農活動を支える「生産者支援」の役割を担うと同時に、消費者への北海道産農畜産物の安定供給をおこなっている。また、北海道ブランドの構築やPR活動など、新しい需要を開拓する活動も展開。

https://www.hokuren.or.jp/

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