Taste of Japan

日本の美味しい海の幸、マダイとブリが世界の食卓に

海に囲まれた日本は、極上の海の幸に恵まれている。なかでも、赤い体色が美しい白身魚の代表格であるマダイ、そして脂が乗って冬に旬を迎えるブリは、ともに縁起のいい魚として知られる存在だが、養殖技術が発達したおかげで、現在では一年を通して美味しくいただくことができるように。また、生産が安定したことで海外への輸出も増加している。繊細で上品な美味しさを誇る日本のマダイ・ブリの魅力に迫る。

【マダイ】
「花は桜、魚は鯛」と、古来より日本で愛されてきたマダイ。鯛という名前を持つ魚は数多あれど、なかでもマダイは特別な存在だ。その華やかな赤い体色と“めでたい”という語呂合わせから、縁起がよい魚だと尊ばれ、お食い初めや結納式といった祝いや祭事の席で、尾頭付きの姿焼きを食べる風習はいまも続いている。淡白で上品な味わいの白身は、どんな料理とも合わせやすく、和食だと焼き魚や煮魚を始め、お吸い物、天ぷら、ご飯と一緒に炊く鯛めしといった調理法などが挙げられる。また、新鮮なうちに生で刺身にしていただくと、マダイ独特のプリっとした弾力のある食感と強い旨味を味わうことができる。さらに卵巣の真子は炊き合わせに、精巣の白子は酢の物や鍋の具にするといった食べ方も楽しむことができる。和食だけでなく、洋食の場合も、クセのない淡白な風味を生かし、カルパッチョ、ムニエル、アクアパッツァ、ブイヤベース、パエリアなど、あらゆる料理において重宝され、海外のさまざまなスパイスや調理法にも合わせることができるので、幅広い料理への活用の可能性を持っている。

お食い初めとは、生後100日前後にお祝いする日本の伝統的風習で、一生食べることに困らないように、という願いを込めて料理を用意する。尾頭つきの鯛は縁起が良いとされている。

天然のマダイには旬があり、産卵期を迎えた春や、越冬するために栄養を蓄えた秋が、脂がしっかりと乗って最も美味しいとされている。春の「桜鯛」、秋の「紅葉鯛」と、それぞれ獲れる時期によって呼称があり、それらは特に珍重され、季節の風物詩にもなっている。また、日本各地で水揚げされるマダイは、育ってきた海域の潮流や餌がそれぞれ異なることにより食感や旨味もさまざまで、時期だけでなく、獲れる漁場によって味が異なるのも特徴である。特に有名なのは、長崎、愛媛、明石、鳴門等で獲れる天然マダイで、速い潮に揉まれて育つため、身の締りがよく、大変美味であることで知られている。ゆえに、天然のマダイは高値で取引されるのが一般的だ。

淡白な風味の白身なので、アクアパッツァやブイヤベースなど、ハーブや具材との相性も良く、また魚の出汁が出るスープも美味しい。

一方で、近年は日本の養殖技術も発達し、全国各地で盛んに行われている。現在、養殖のマダイの漁獲量は天然ものの約5倍にものぼる。天然の稚魚を採捕して育てる養殖は、主に温暖な西日本の、波が静かなリアス式海岸の地域で行われており、特に愛媛県の宇和島市とその周辺だけで全国シェアの約50%を占めている。他には、熊本、三重、高知、長崎、和歌山などの産地があり、それぞれ餌や飼育方法に工夫を凝らした特徴的なブランド鯛なども存在する。たとえば餌に伊予柑を混ぜて、コリコリした食感とさっぱりした脂になるよう肉質改善をした「伊予柑真鯛」(愛媛県八幡浜市)や、ハーブオイル入りの餌を与えて臭みをなくした「ふかうら真鯛」(愛媛県愛南町)、運動量を多くすることで天然に近い味を実現した「仙崎のマダイ」(山口県長門市)、脂肪酸量を増やして旨味を強くモチモチとした食感にした「鯛一郎クン」(愛媛県宇和島市)など、さまざまな試みと努力が行われている。いずれにしても、養殖のマダイは天然ものに劣らない美味しさを誇る上、比較的手軽に入手できるおかげで、日常的に食卓に並ぶ魚になったのだ。

【ブリ】
養殖技術が発達したおかげで、天然ものと遜色のない美味しさを実現させているのはブリも同様だ。日本の固有種であるブリは、成長して大きさが変わるごとに名称が変わるため、縁起のいい出世魚として知られる。稚魚の時期から順に、モジャコ、ワカシ、イナダ、ワラサ、ブリと呼ばれるが(関東の場合)、ブリと呼ばれるのは体長が80㎝を超えるサイズになってから。脂が乗ったまろやかな風味のブリの身は、煮ても焼いても美味しく、ブリ大根、照り焼き、刺身、ブリしゃぶなどが代表的な料理だ。良質なタンパク質に加え、動脈硬化や血液の改善にEPA、脳や神経の働きにDHAが効果があるとされている。さらにビタミンB群、ビタミンDなど、身体と頭に欠かせない栄養素が豊富に含まれるのも注目すべき特徴だ。そんなブリが最も美味しいとされる旬の季節は、なんといっても産卵期前の冬である。この時期のブリは特別に「寒ブリ」と呼ばれ、一段と脂が乗って格別な美味しさを誇ることから高級魚扱いされる。

約80㎝以上もの大きさのブリは、冬の脂の乗った時期が旬とされ、「寒ブリ」と呼ばれる。

ブリ大根は日本の定番おかずのひとつ。脂の乗ったブリの風味が大根にも染みわたり、こってりと味わい深い。

元々回遊魚のブリは、年間を通して安定的に捕れるものではなかったが、養殖技術が発達したおかげで現在は良質なブリを年中入手できるようになった。養殖は、一大産地である鹿児島県を始めとする、愛媛県、長崎県、大分県などの西日本の沿岸地域で、春に流れ藻に付いた稚魚(モジャコ)を捕獲して養殖する方法がとられており、天然のブリ類の漁獲量を大きく上回り、1年を通して店頭に並ぶブリのほとんどは養殖が占めている。

また、日本のブリの養殖技術は、その餌やりに特徴がある。昨今では、酸化によって血合い筋が褐色に変化するのを防ぐために、ビタミン類を豊富に含む餌として柑橘類に着目。各地でさまざまな柑橘類を餌にする“フルーツ魚”を育てる養殖が広まっていったのだが、身に爽やかな柑橘香がしたり、魚臭さが少ないといった独自の特徴が人気となり、続々と登場している。代表的なものとしては、ほのかに柑橘香が香る「柚子鰤王」(鹿児島県長島町)や、抗酸化作用と旨味成分が向上した「かぼすブリ」(大分県)、伊予柑の果皮などを用いることで、日持ち、味わいに加え香りも付加された「みかんブリ」(愛媛県)などがある。その他にも、高い抗酸化作用を持つポリフェノール成分に着目し、チョコレートを餌に混ぜて、より鮮度を維持できるという「チョコブリ」(愛媛県)や、オリーブの葉を餌に加えることで、脂質を抑えつつ甘味成分が向上した「オリーブブリ」(香川県)など、ユニークなブランド魚も話題になっている。このように、個性あふれるさまざまなブリを楽しめるようになったのは、ひとえに日本の地域性を生かした独自の養殖技術があってこそだと言えるだろう。

生産が安定している上、持続可能という観点でも注目される養殖魚は、輸送技術の発展もあり、世界中でその美味しさを共有することができる。なかでも、マダイとブリは脂のノリや食感、甘みなどが海外でも人気であり、火を通してもその味わいを楽しむことができるため、幅広い料理へ活用できる可能性を秘めている。手間暇かけて大事に育てられ、日々さまざまな研究が行われている日本の魚が、世界でも美味しく食べられるよう願っている。

【養殖】
魚介や海藻などを人工的に育てる産業。日本の養殖生産地は主に南にあり、マダイ、ブリなどに加え、カンパチ、シマアジ、ハマチ、トラフグ、ヒラマサなど数多く育てられている。栄養学をもとに、カロリーや栄養素を計算して作った適量の餌を与えられているため、天然魚よりも高い栄養が備わっていることもある上、天然に劣らない美味しさを誇る。また、餌が残って海を汚すことがないよう、環境負荷の少ない餌の開発など、地球に優しい持続可能な取組なども研究されている。

参考:「水産物・水産加工品輸出拡大協議会」ウェブサイト、「一般社団法人 全国海水養魚協会」ウェブサイト、農林水産省広報誌『aff(あふ)』 2019年1月号
写真提供:amanaimages、農林水産省広報誌『aff(あふ)』
文・有元えり

鯛を使ったレシピはこちら

この記事をシェア