Taste of Japan

毎日の食卓から伝統料理まで、日本の食の中心にある「米」

日本人の食卓、そして和食を表現するうえで、欠くことのできない食材「米」。日本の食生活の基本ともいえるお米は、食卓の主役でもあり、他の料理を引き立てる名脇役でもある。お米は、ごはんが飯と食事そのものをあらわすように、3000年近くにわたり日本の食文化を支えてきた。海外においても、外観、味の良さや品質の高さが評価されている日本産米は、お寿司やおにぎりとともに、和食になくてはならない日本産食材として世界で広く食べられている。

日本人の食生活の中心として古くから大切に食べられてきた「米」は、水を張った広い水田で栽培される。青々と茂る稲も、収穫時期に色づく金色の稲穂も、移ろう日本の美しい四季を知らせてくれるものだ。
「米」の歴史は、3000年以上にも遡り、縄文時代の終わり頃から栽培され、奈良時代には常食とされていたことが明らかになっている。雨が多く降る季節と、雨が少ない季節とがはっきり分かれている気候が米作りに適しているとされ、水田を満たす豊かな水と梅雨のある日本にとって、米作りは最適かつ自然なことだったのだろう。歴史を重ねるごとに、国内の人口増加と共に次々と田んぼが作られ米の生産量も増えていく。「米」は日常の食卓にのぼる主食として、日本人の身体を作ると同時に、日本の経済をも支えるものになっていったのだ。

水の張られた水田は美しい日本の田園風景でもある。

秋の実りである稲穂は収穫時期には金色に色づく。

「米」の食べ方の基本は、水で炊くことだ。玄米をついて精白し、白米を水とともに火で炊くと、ふっくらモッチリと姿を変え、美味しい「ご飯」ができ上がる。精米方法も白米だけでなく、玄米や五分づき米など、外皮をどれだけ残したつき方をするかによっても、調理時間や味わい、栄養価も変わってくる。ヘルシー志向の近年では、外皮を残した「米」の美味しい食べ方なども研究されている。調理器具もお釜や土鍋だけでなく、水分量や水質、温度などにも気を配る、さまざまな高性能な炊飯器が日本では販売されているように、毎日のように口にする「米」には深いこだわりと愛情が注ぎ込まれているのだ。

玄米と白米。精米によって栄養価も味わいも変わり、さまざまな米の魅力を楽しめる。

ご飯が「主食」となる食事スタイルは、弥生時代からだと言われている。ご飯に、汁とおかずが一品ずつという「一汁一菜」が基本だったが、次第にご飯を中心に、魚や肉、野菜などを煮たり焼いたりと、いろいろな「おかず」を添える、いわゆる主食と副食のカタチをとるようになっていく。現在も和食の基本スタイルとなるのは、栄養バランスが取れた「一汁三菜」だ。「一汁三菜」とは主食であるご飯に、汁物、主菜、副菜2種で構成された日本料理(本膳料理)で、一人ひとりが膳に乗せる料理の品数を表している。この食事は、身体や健康に必要な炭水化物、タンパク質、脂質、ビタミン、ミネラルなどがバランスよく備わっている。「一汁三菜」の食事は、四季折々の食材と、その土地ならではの農産物を用いた料理を、ご飯とともに味わうという食文化であり、日本人にとっては自然で、健康的な食生活にもつながっている。

一汁三菜の例。ご飯、味噌汁、香の物に加え、魚や肉などの主菜が1品、野菜を使った副菜が2品添えられる。

「米」は世界中でもさまざまな種類が栽培され、各国の食文化のなかでも、料理を引きたたせたり、馴染ませたりする存在だが、なかでも日本米の魅力は、何といっても味わい深いモッチリ感にある。丸みを帯びた楕円形で、粘りと甘味が強いのが特徴だ。また、日本列島の北から南まで、さまざまな地域の気候や風土に合わせた特徴やこだわりを持つ銘柄の米が生産されており、特に全国的に多く作られている「コシヒカリ」は有名で、他にも「ひとめぼれ」「ヒノヒカリ」「あきたこまち」など、その数は800種以上にものぼる。炊いた時の粘り感や甘味、歯触りなどが日々研究されており、繊細な味の違いを感じ、追い求める日本人ならではの探究心といえる。さらに「新米」と呼ばれる、その年に収穫された新しいお米を味わうことも、日本人にとっては季節の美味しさを感じ「旬」を取り入れる食生活の特徴のひとつとして挙げられる。

また、米の特徴としては、加工品としてもさまざまに姿を変えることも魅力である。米を発酵させれば、日本酒や、米味噌、しょうゆ、みりんなどの調味料ができ上がり、精米時に残る「米ぬか」は、塩と水を混ぜて「ぬか床」となり、漬け物を作ることができる。さらに、米を砕いて粉状に姿を変えた「米粉」も、奈良時代から食されている伝統的な米の加工品だ。中でも粒子の荒い「上新粉」や、もち米から作られる「もち粉」、「白玉粉」などは、だんごや餅、羊羹や煎餅など、和菓子の材料として古くから親しまれている。近年では製粉技術の進歩により、微細に砕かれた「米粉」が生産されるようになり、パンやクッキー、パスタ、ケーキ、てんぷら粉、麺類などバリエーション豊かに使われている。健康志向やグルテンフリーなどの点からも、海外でも注目される食材のひとつになり、アレルギー源になる可能性を含む小麦の代わりとして用いられることも多い。米粉はアミノ酸バランスに優れた米の高い栄養価を、ご飯と違う食べ方で摂取できるという点が魅力だ。米を食すことは、日本を味わうこと。シンプルでいて奥深く、さまざまな料理への可能性にも満ちている。

【一汁三菜】
和食の基本とも呼ばれる、「白米+汁物+3点のおかず」という献立構成のこと。日本古来の「本膳料理」にちなんでいて、白米を主食に季節の料理を味わうもの。エネルギーになる「ご飯」。食事に潤いを与える「汁物」。おかずのひとつの「主菜」は肉や魚といった身体を作るもの、そして「副菜」2品は、主に野菜、キノコ類、海藻類など、主菜では取れない栄養素を補え、体調を整えてくれるものが理想とされる。日本の伝統文化であり、健康的食生活の理にかなった食事スタイル。

参考:一般社団法人 全日本コメ・コメ関連食品輸出促進協議会、一般社団法人 和食文化国民会議
写真提供:photolibrary
文・須賀美季

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