Taste of Japan

秋から春にかけて「旬」を迎える、多彩な日本の柑橘

インド・アッサム地方を中心とする東南アジアが発祥とされる「柑橘」が、日本で初めて歴史に登場するのはいまからおよそ1200年前、神話の時代に遡る。古事記や日本書紀に記されている、不老長寿の果物として中国から持ち帰ったという“橘(たちばな)”が、現在日本に広く分布する「みかん」の木の原形とされている。以降、日本の柑橘は大きさや形、味わいを多様に発展させ、日本の長い歴史の中で広く親しまれてきた。

日本だけでも現在100種類以上の種類が認められている「柑橘」だが、食用としてもさまざまな種類があり、日常の暮らしの中でも多彩な品種が楽しまれている。
日本の代表的な柑橘として愛される「温州みかん」は、そのまま生で食べることができ、爽やかな香りと甘酸っぱさに加えて、甘みが強いのが特徴だ。また最近では、ゼリーのような食感の果実と果汁がたっぷりの「紅まどんな」のように、プレミア感のある柑橘も登場し、これまでになかった“高級柑橘”も人気となっている。魅力的な新しい品種を次々と生み出している点でも、日本の柑橘栽培は世界的に見ても勢力的で注目されている。海外への輸出における鮮度保持技術や資材の開発も進んでおり、特にカナダでは温州みかんが 日本産果実として定着し、“クリスマスオレンジ”として親しまれて贈答用にも用いられていたり、香港や台湾、シンガポールなどのアジアでも高級スーパーマーケットなどでの需要が高く、ジャパンブランドとしての魅力が浸透している。

温州みかんは日本の代表的な柑橘類。皮が薄いので手で簡単にむくことができ、甘くてジューシーで日本では生産量が最も多い品種。

また、「温州みかん」の特徴として、収穫の時期が異なることによって、名称や味わいが変わるという点も面白い。9~10月頃に収穫するものは果肉がジューシーで酸味がやや強い「極早生(ごくわせ)」、10月下旬~12月頃は甘みとほどよい酸味が味わえる「早生(わせ)」、11月下旬~12月下旬は酸味が少なく甘みが強い「中手(なかて)」、12月下旬~3月にかけてはほどよい酸味とコクのある甘さの「晩生(おくて)」と、収穫期に合わせて変化していく。そういった変化も含めて、日本の柑橘はより多彩な味わいを楽しめると言えるだろう。

すたちやかぼす、シークワーサー、だいだいなど、爽やかな香りと豊かな風味が特徴の香酸柑橘。果汁を搾ったり、果皮を削って薬味としても使われる。写真は農林水産省広報誌『aff』2017年1月号より引用

日本ならではの柑橘としては、香酸柑橘の存在を忘れるわけにいかない。生食には向かないが、酸味が強く、香りを楽しむ柑橘として、「柚子」、「カボス」、「スダチ」などが挙げられる。薬味や調味料として使うのが一般的で、和食でもよく用いられる存在だ。焼き魚や汁物に果汁を絞ったり、果皮を削って添えたりすることで、料理に清々しい香りをまとわせ、風味を際立たせる働きをする。主に九州や四国などを中心に、地域ごとに特色のある香酸柑橘が作られており、果実の大きさや酸味のやわらかさ、香りがそれぞれに異なる。

和食でよく用いられる柚子は、煮物などに果皮をのせることで、ほのかな風味を感じさせる。

なかでも香酸柑橘の代表格とも言える「柚子」は、使い方にバリエーションが豊富に存在し、日本ではもちろんのこと、海外でも注目されている。特にヨーロッパでは、フランス料理の肉料理や魚料理に合わせるソースに含ませて独特な酸味と香りを添えたり、ドレッシングの材料として野菜と和えたり、果皮や果汁を用いたマカロンやケーキ、チョコレートなどのスイーツなどにも応用されている。爽やかさにほのかな苦味を感じさせるのが特徴で、シンプルに炭酸水で割れば清涼感ある魅力的なドリンクにもなる。
また、日本では柚子の収穫期である冬場には果実をまるごと、または果皮をお風呂に浮かべる習慣もあり、「柚子湯」に入ると血行が促進され、身体がよく温まると古くからよく知られている。リラックス効果が高い独特の香りは、アロマオイルとして利用されることも多く、癒しの力を持つといった点でも柚子はまだまだ可能性に満ちている食材と言える。

ゆずの主な産地は高知県や徳島県。和食に多く用いられる柑橘だが、海外でも多様な使われ方をされている。癒される香りで、美容にも良いとされるビタミンを多く含むため、化粧水や入浴剤としても使われる。

このように、日本の柑橘が多彩に種類を増やすことができたのはなぜか。それには、日本の豊かな四季と温暖な気候に密接な関係がある。日本は1年が春、夏、秋、冬と四季に分かれており、農産物である野菜や果物には、季節ごとに最もおいしい時期とされる「旬」が存在する。温暖で太陽の光に恵まれた環境を好む柑橘は、西日本および太平洋側沿岸部での栽培が盛んである。春に白い花を咲かせ、厳しい夏の間に緑の実をつけて成長、そして秋から冬に丸々と育った果実は、果皮を鮮やかな橙色や黄色に変えて収穫期を迎え、主な柑橘類は秋から春(11月~3月)が食べ頃の「旬」となる。四季の恵みをいただくという喜びとともに、旬の季節の中でもさまざまなバリエーションと味わいを楽しめることが、日本の柑橘ならではの醍醐味である。

参考:「日本くだもの農協」ウェブサイト、農林水産省広報誌『aff(あふ)』2017年1月号
写真提供:amanaimages、農林水産省広報誌『aff(あふ)』
文・有元えり

柚子を使ったレシピはこちら

【旬】
野菜、果物、魚介などの季節の食べ物が、出盛りの時期を「旬」と呼ぶ。日本の豊かな自然の中で育まれてきた「旬」の食材は、他の時期よりも栄養価が高いうえ、味が熟し、最もおいしいとされている。市場にも新鮮な状態で多く出回るため、季節ごとに「旬」のものが食卓に並ぶことが一般的だ。また「旬」の食材の多くが、夏なら身体を冷やし、冬なら温めるといったように、人間の身体に働きかける効能をもつことも知られている。近年では「温州みかん」などはハウス栽培も増え、1年を通じて店頭には並んでいるが、本来の収穫時期にとれたものを食べることは、体調を整える上でも大事だとされている。

この記事をシェア